閉伊川下流に発達した宮古市は、昔から大雨や台風による洪水、高波、高潮などの災害に見舞われてきました。豪雨後の山崩れやがけ崩れ、土石流、地すべりなどの二次災害もたびたび発生し、人々の生活や生命を脅かしてきました。近年は、短時間で局地的に降る集中豪雨などが頻繁に発生していることから、下水道や排水路が水をさばききれなくなって、あふれ出した雨水が市街地の建物や土地、道路などを水浸しにする内水氾濫も増えてきています。
敗戦からまだ間もない昭和22年9月、マリアナ海域で発生した11号台風(カスリーン風)は、関東、東北の河川を氾濫させ、各地に被害をもたらしました。関東では利根川堤防を決壊させ、埼玉県・東京都の家屋約16万7千棟が浸水。岩手県では北上川流域および閉伊川の被害が甚大で、宮古市(旧川井村)でも山田線の不通をはじめ家屋の流失、道路の欠潰、橋梁の流失などの被害がありました。
(気象庁「災害をもたらした気象事例」)
▶https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/1947/19470914/19470914.html
前年に猛威を振るったカスリーン台風の被害復旧もまだ完了していない翌年、千葉県に上陸したアイオン台風は前線の活動が活発となり、仙台で351.1mm、宮古で249.3mmなど東北の太平洋側に大雨をもたらしました。北上川や閉伊川が氾濫し、一関市と宮古市(旧川井村、宮古中心地)を中心に700名を超える死者・行方不明者が出るなど、カスリーン台風の被害を上回る大災害となりました。
(気象庁「災害をもたらした気象事例」)
▶https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/1948/19480915/19480915.html
橋脚が倒れ鉄橋が落ちた国鉄(現JR)山田線(平戸-川内間)
出水がやっと引き始めた宮古市の中心街の末広町(9月17日朝)
※写真提供:旧宮古測候所
気象庁が1951年に統計を開始して以来、初めて東北太平洋側に上陸した台風第10号は、八丈島の東海上で発生し、8月30日17時半頃には暴風域を伴ったまま岩手県大船渡市付近に上陸し、東北地方を通過して北海道の西の日本海に抜けるという特異な進路をたどりました。
宮古市、久慈市では1時間に80mmの猛烈な雨となり、北海道上士幌町では平年の8月1か月の降水量を超える329mmを観測。宮古市では最大瞬間風速が37.7mの暴風も記録。河川の氾濫、道路の途絶による集落の孤立、土砂災害の発生など甚大な被害をもたらしました。
(内閣府防災情報「平成28年台風10号による被害状況等について」(平成28年9月1日))
(盛岡地方気象台発表「岩手県災害時気象資料/平成28年台風第10号による大雨と暴風、波浪」
(平成28年9月2日))
増水した閉伊川と橋脚に絡まる流木
決壊した道路(和井内)
10月6日に発生した台風第19号は、大型で猛烈な台風に発達した後、同月12日19時前に伊豆半島に上陸。静岡県や新潟県、関東甲信地方、東北地方で記録的な大雨となり、気象庁は13都県に大雨特別警報を発表し、最大級の警戒を呼びかけました。
台風は同月13日に温帯低気圧に変わったものの、その後も18日夜から19日夕方、また24日から26日にかけて太平洋側を中心に広範囲で短時間豪雨が続き、各地で河川の氾濫やがけ崩れ等が発生。全国で死者104名、住家被害で全壊3,308戸、床上浸水8,129戸の被害を出し、岩手県では宮古市、岩泉町、釜石市で土砂崩落・道路陥落による集落の孤立が特徴的な被害となりました。
(総務省消防庁「令和元年版消防白書」、内閣府防災情報「令和元年台風第19号等に係る被害状況等について」(令和2年4月10日))
土砂により通行できなくなった重茂トンネル
七田川の氾濫で被害をうける三陸鉄道リアス線