前史・慶長奥州(三陸)
地震津波
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明治三陸地震津波
昭和三陸地震津波、チリ地震津波
東日本大震災

東日本大震災【3】改良復旧された防潮堤と高台移転のまちづくり

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改良復旧された防潮堤と
高台移転のまちづくり

東日本大震災による津波は、従来の被害想定を大きく上回る甚大な被害が発生し、防潮堤や水門などの構造物のみで守りきることは困難でした。津波到達時間の遅延や水位の低減、浸水範囲の縮小などに一定の効果はあったものの、災害に上限はないこと、すべての津波を防潮堤で防ぐことは不可能なこと、構造物のハード対策にのみ依存することの限界が改めて示されました。

「避難」と「ハード整備」を組み合わせた津波対策

東日本大震災を受けて、2011年12月に「津波防災地域づくりに関する法律」が成立・施行されました。同法は、最大クラスの津波が発生した場合においても「なんとしても人命を守る」ことを第一とする考え方で、地域ごとの特性を踏まえたうえで、海岸堤防等のハード整備や避難訓練などのソフト施策を組み合わせた「多重防御」の発想で、津波被害に強い地域づくりを推進するというものです。

明治・昭和・東日本大震災の津波における、
田老地域の浸水範囲

東日本大震災の教訓から、2段階の防災レベル(「頻度の高い津波」と「最大クラスの津波」)が導入され、この考え方に基づくハード対策が進められています。
・頻度の高い津波(数十年~百数十年周期で発生)に対する防災【レベル1】
 防潮堤を整備し、防潮堤により津波を食い止めることで、人命や財産、産業・経済活動等を守ります。
・最大クラスの津波(数百年~千年に1回:東日本大震災等)に対する防災【レベル2】
 人命を守ることを最優先とし住民が避難することを大前提として、ソフト対策とハード対策を組み合わせて減災(多重防御)することを目標としています。

(出典:岩手県沿岸広域振興局土木部(2021年1月6日)
「地域と政策~岩手県内における津波防災とインフラツーリズムの取組について~」資料)

地形や被災の教訓を踏まえた新しいまちづくり

宮古市では、震災から3か月後には復興に向けた基本方針を策定。地区ごとの数回にわたる「まちづくり検討会」で市民の皆さんと議論を重ね、各地域の地形上の特性や過去の津波の教訓なども考慮しながら、より現実的な復興計画に発展させ、詳細なまちづくり計画を練り上げました。
災害に強いまちづくりに向けた宮古市の復興事業は、次の2つに大別されます。
①市街地をかさ上げして、新たな宅地や産業用地を集約する「土地区画整理事業」
②高台等に住宅地を造成して移転する「防災集団移転促進事業」
また、新たな防潮堤の建設や従来の防潮堤のかさ上げ、水門の新設・かさ上げ・位置の変更、防潮林の造成など津波対策施設の復旧と整備、すまいと暮らしの再建、安全な地域づくりなどを進め、災害に強いまちづくりに取り組んでいます。

生活再建のための災害公営住宅建設や浸水対策のポンプ場整備など

西町災害住宅1号棟

新川町雨水ポンプ場

T.P.+10.4mの堤防に水門が新設される閉伊川
(2022年2月現在:工事中)

被災直後(2011年3月16日撮影)
(写真提供:岩手県県土整備部)

2021年9月撮影

2022年9月撮影

宮古港海岸の鍬ケ崎地区に新設される防潮堤
(2022年2月現在:工事中)

被災直後(2011年3月16日撮影)
(写真提供:岩手県県土整備部)

2021年9月撮影

2022年9月撮影

多重防御のまちづくりで、津波から命を守る

宮古市と住民による「まちづくり検討会」などで協議を重ねた結果、田老の防潮堤は、第2・第3防潮堤を標高14.7mで改良復旧し第一線堤とし、第1防潮堤は地盤沈下分の約50cmをかさ上げしたうえで第二線堤防とすることとなり、学校や道の駅が立地する市街地はこれまで通り二重に守られることとなりました。

東日本大震災【3】改良復旧された防潮堤と高台移転のまちづくり

三王眺望公園に展示された、「田老地域の復興まちづくり計画」

整備内容(2022年2月時点)

・海側の防潮堤(第一線堤):高さ14.7mで新たに整備中
・70m陸側の防潮堤(第二線堤):既存の防潮堤は70cm沈下したため原形復旧し、10mの高さに再整備した
・国道45号:山側にルート変更し2mかさ上げした
・低地の住宅の高台移転:北側の山を切り開き住宅地を造成、三王団地として25.6ha、161区画整備した

田老地域における津波防災・減災のまちづくりは、「一線堤として機能する防潮堤の背後に、かさ上げした道路や鉄道等の減災機能を有した施設を配置して居住地を多重に防御する」という東日本大震災以前の津波防災にはなかった多重防御を軸に据え、複数の施設で津波を防ぐ「多重防御」、津波から逃れる「避難」、住まいの「移転」を組み合わせた新しいまちとして復興しました。
新しくできた三王団地は、防災集団移転促進事業の団地としては県内最大規模で、津波最大遡上高を超える海抜40~60メートルの地に住宅用地を配置すべく、山を切り拓き造成しました。また、田代川の水門位置を変更しての新設と堤防のかさ上げなども行いました。

震災前(1977年10月撮影)
※写真提供:国土地理院

被災直後(2011年3月撮影)

高台移転後の田老のまち(2021年撮影)

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